紹介
小学生・中学生・大学生・社会人のそれぞれをユースケースを示しながら、境界知能の人が普段何を考えているかを紹介している。
例えば、境界知能の人の「人も気持ちがわからない」「手先が不器用になりがち」「運転免許取得に苦労する」といった特徴を、具体的に紹介している。
感想
境界知能の人の生活の困難さが、最後には報われるような書き方がなされている点については納得できなかった。
「何が悪かはわからない」という特徴を持つ人に対して、「人から騙されないようなコンサルテーション」を受け、これからは騙されないという風に終わらせるシーンがあったり、
「言われたことがそのままできない」という特徴を持つ人が、「境界知能の特性を理解し、彼らに合った働き方を提案してくれる会社」と出会うようなシーンがあったりする。
本書はおそらく境界知能ではない人に対して、境界知能の人の生活を理解することを目的にして書かれているため、その目的は達成できると言えるだろう。
しかし、境界知能の人の特徴を受け入れられる社会を作るのはやはり難しいと思う。社会側を変えるのではなく、起こったネガティブシチュエーションに対する自分の認知側を変える必要があると思った。
例えば、仮に、本人が意図していない場面で詐欺の受け子になってしまっていたケースがあるとする。
「それは詐欺の受け子になってしまっています。騙されないように〇〇、△をしましょう」
「わかりました。もうだまされません」
という帰結になったとする。
だが、そういう人は別のシーンでだまされる。
本人は必要ないと感じている生命保険に契約してしまったり、マルチ商法を行う組織体の会員になってしまったりする。
そういう彼らは、特定のシーンにおけるアドバイスを特定のシーンでしか活用できないのである。
「騙されないように、知らない第三者からのもうけ話には注意しましょう」
詐欺の受け子になってしまっている人に上記のようなアドバイスをしても、彼らは「詐欺の受け子になるようなシーンでしか」適用することができないのである。
だから、例えばマルチ商法などの他のシーンにおいて、「第三者からのもうけ話」に注意するという「意識」がない。
意識がないから、知らず知らずのうちに引っかかってしまう。それの繰り返しである。
そのような状態の彼らに対して、社会側が変わるはずもない。私個人では、社会側が変わるべきだと考えてはいるが、社会側が変わるための経済的なメリットがないのである。
障がいがある人をゲーマーとして育成することをうたっている民間事業者があるらしい。そういう人を採用することで国からの補助金が得られる。だが、事業者としては、彼らをゲーマーとして育成することには興味がなく、採用だけして後は時間を待つ。のちに普通の就職あっせんをおこなうようなことをしているらしい。
そういう話を聞くとなおさら、「社会側が変わるはずもないので、あるシチュエーションに対しての境界知能の人の認知を変えなければならない」と思うのである。
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