読書をすることは人の物語をドローンで眺めることである。

読書の一番の価値は何か。

あらゆる人が作った経験を追体験できることにある。

本には必ず主人公がいる。

評論文であれば主人公=著者であることが多いが、小説や漫画などでは主人公=空想上の主人公ということになろう。

本を読むことでその主人公の物語を歩むことができる。

厳密には、主人公が見聞きした全てのものを読者が感受することは不可能である。

主人公(=著者)が日本の年金制度の脆さについて論じている場合は、著者がこれまでそれに関してどれほど苦労してきたのかを正確に感受することは難しい。

主人公(=空想上の主人公)の師匠を宿敵に殺されたときに、その主人公の感情を正確に感受することは難しい。

だから、主人公の物語を歩むというよりは、主人公が歩んでいる道をドローンで後追いすることという表現が一番適切であろう。

また、本を読むことの魅力は、物語と自身の現実世界を行き来しながら、自身の現実世界での思考を深めることができる点にある。

ドローンで物語を後追いする中で、「そういえばドローンのどのボタンを押してどのスティックをいじっているんだっけ?」と思うことがある。

その時には、現実世界に感覚を馳せ、「そういえば右手の親指で右スティックをいじっていた」などと理解するだろう。

上記はドローンの例だが、この作業が物語と現実世界の間で起こるのである。

つまり、物語を後追いする中で自分が感じた引力を、現実世界の中で揺り戻し、現実世界の中でのアレコレについて思いを馳せるのである。

常に現実世界を生きているのみでは、自然化してしまった現実世界のアレコレに思いを馳せるのは不可能である。

この意味で読書は魅力的である。

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